ズミーレーシングファミリー 代表 深栖
    はじめに
 
  いつもサーキットで集まる仲間達の中で、耐久レースへチャレンジしようと、持ち上がったのが約4年ほど前だったか。その仲間達は走行会のタイムアタックでは上位を常に狙える実力を持っており、中にはスプリントの草レースに定期的に参加して、形は違うが、皆、趣味のモータースポーツを楽しんでいた。ただ、どこか別の場で、違った楽しみを探していたのも事実。またドライバーとしての実力や、チーム一丸となって戦う力を試してみたくなっていた。
  そこでガレージソニックとズミーレーシング合同でチームを結成し、耐久レースに参戦しようと決断した。もちろん狙うは優勝であったが、経験もまだ無く、そこから車や、耐久レース特有の給油装置などの準備をして、実際にエントリーを済ませ、スタートラインへ並んだのが2008年の冬であった。ここから耐久レースの面白さに引き込まれていくのであった。
    これで4度目の挑戦
 

 
  私(ズミー)、個人的には、Idlersさんのレースに参戦するのはスプリントを含めると、ここれで6度目になる。この耐久レースに参戦し始めたのは2008年からで、チームとしては今回でちょうど4度目の挑戦となっていた。
  2008年の初参戦時には耐久レースの経験が無く、ペース配分や給油のタイミングなど手探り状態であった。毎回、詳細な記録(データー)を残しそして分析し、次のレースの作戦として活用し、更にまたデーターを積み上げる、この繰り返しを地味に続けていた。成績は初参戦時にはちょっとしたトラブルがあり、30位に沈み、2回目は6位、そして大雨の前回のレースはなんと4位まで上り詰めていた。そろそろ頂点が見え始めてきた。今回はチーム全体が優勝を意識しており、私自身も全ドライバーに、このレースの勝算と意気込みを事前に伝えていた。
  いよいよ我々の決戦は始まった。

    レースは朝が早い
 
  レース当日、出発は朝の2時半。現地には5時半に到着予定。積載車とサポートカー2台で現地へ向かう。着いたのは予定より早く5時ごろ。ツインリンクもてぎのゲート前には多数のエントラントがオープンを待っている。5時半、ゲートオープン、指定されたパドックにサポートカーを停車し、ピットエリアに真っ先にロードスターを運び入れる。そして準備開始。手際よく分担された作業でクルーとドライバーは準備を整える。そして車の整備も始まる。
 


ある程度ピットの準備が出来ると、誰からともなく車に集まる。そして作戦の最終確認が始まる。ピットインのタイミング、そしてペース配分、SCカーの出たときの対処などなど、各人がそれぞれ言葉少なく、確かめ合った。
 恐らくチーム誰しもが感じていただろう、ピリッと張り詰めた空気、そして他を寄せ付けないただならぬ雰囲気。すでにこの時、勝利を目指す集団になっていた。

 
  そうこうすると車検が始まった。特に車に問題はない。さすがにレースのプロ、ガレージソニックの整備は完璧だ。一発OK。いつもながら陽気なオフィシャルに和まされる。耐久レースならではの雰囲気を味わう。
 
  車検後、ファーストドライバー 村上 が乗り込む。ローリングスタートはもう慣れたもの。ただ今日は少し緊張気味か?それもそうだろう、ピットにはさっきよりも鋭く張り詰めた空気が辺りを囲う。
  がんばってくれ!村上!
 


  いよいよスタート30分前。くじ引きによって決まるグリッドへ車を並べる。もちろん手で押すのがこのレースの決まり。グリッドは今回24番目。おおよそ中間の位置なので、それほどアドバンテージはない。このレースは予選が存在しないので、チームの運も試されれている。
  一人一人の思いを込めて車を押す。トラブル無く走ってくれ!一台でも多く抜いて帰って来い!
がんばれ!ファーストドライバー!

 


  グリッド上で記念撮影。スタートラインが見える位置なのでそんなに悪い位置ではないと感じていた。チーム一同余裕の笑顔!どこと無く自信にあふれているのではないか。レースを心底楽しんでいる笑顔だ。






ローリングスタート開始5分前のアナウンスが聞こえてきた。ドライバーと車を残してピットへ退散だ。

     ファーストドライバーごぼう抜き
 
   ローリングスタート開始!各車SC(セーフティーカー)に続いてローリングスタートが開始された。トラブル車両は無し。ピットに映し出されるTV画面を見つめる。
  きれいに整列し、一周でSCはピットへ戻る。さあ!スタートだ!ただし、ローリングスタートはスタートラインまでは他車を抜くことは出来ない。我がロードスターは前車との間合いを詰めてスタートラインを過ぎて一気にポジションアップを狙う。
  序盤ペースが上がらず、ややピットには暗雲が立ち込めるが、村上すぐにいつものペースを取り戻す。いや、いつも以上のすごいペース。安定したペースでポジションをどんどん上げる。ごぼう抜きとはこのことか。
 
   混戦の中、タイムを落とさずきれいに抜いて走る村上。ダウンヒルストレートも快調に駆け抜ける! 走りに迷いはない。 結果ルーチンでのピットイン時には5位に上げていた。
    緊張のセカンドドライバー
 
  セカンドドライバーは今回もてぎ初走行。池田。ただ自前のAE86で筑波などを、走り回っており、良いタイムの実績を持つ実力のあるドライバーなので安心感はある。そしてクルーとしてこの耐久レースには何度か参加経験があるので全体の雰囲気と流れは十分掴んでいる。
  本人は少々緊張気味。走行前にパドックをランニングして心も体もアップをする。気合十分!
 


   ピットで待つ池田の前に村上が滑り込む。ピタリとピット前に車を停める。練習通りにドライバーチェンジをすばやくこなす。さすがに息の合った作業だ。
   問題なくセカンドドライバーにチェンジし車を送り出すピットクルー達。安堵の表情を浮かべる。
   わずかなロス時間でコース上には5位で復帰。コースに慣れるのに数周かかったが、徐々にタイムを上げる。既に3位までポジションは上がっている。その後ひやりとするスピンもあったが、グラベルにつかまることなくリカバリーして、セカンドドライバーのセッションを3位でまとめ上げた。

    攻めるサードドライバー
 
   ここまで何のトラブルも無く、池田はルーチンピットワークに入る。サードドライバの 波戸 に交替する。このピットインで大きく順位は後退。コース上に出たときには8位となっていた。車をいたわりながら徐々にプッシュしタイムを上げ、ポジションをグイグイと上げる。ライバル車のピットインの関係もあり、41周目で1位までポジションを上げて来た。途中クルっと回った?との情報も。。でもタイムは数秒しか落ちてない。リカバリーもうまい。
  もてぎレギュラードライバー、さすがの攻めの走りだ。
    波乱のアンカー
 
   波戸の後半走行時、1位を 5号車S2000 へ受け渡してしまったがそれでも車はノートラブル、2位でピットへ帰還してきた。いよいよ私の走行順番が回って来た。波戸からコースの状況と車の状況をしっかりと教わる。それを頭に叩き込み、さらに前後の車のタイム差も頭に入れ、これから訪れる最後の決戦に向けて戦意を向上させる。
   ルーチンピットワークも問題なく終え、コース上には4位で復帰した。 まずは無線で車の状況を伝える。水温、排温、特に異常なし。そして一周目から攻める。アウトラップのタイムはそのドライバーの実力バロメーターだ。コースインした後、車の状況を把握して、いかにタイムをベストに持っていけるか。これがF1などでも勝負の分かれ目となる。
   アウトラップ28秒との無線が入る。順調な滑り出し。
 
   その後、状況を見ながら、無理しない程度でプッシュながら走行、5号車S2000をピット作業で抜き去り、1位へ。57周目には今回のファーステストラップ25秒台をたたき出しながら逃げの体制へ。
   しかし相手は速かった。あっさりと3周後に5号車に抜かされ2位へポジションダウン。そして車にもやや変化が起こりはじめ、タイムが上げられなくなった。
 
   車の状況が変わって行く中、タイムを落とさないように懸命に走る。ドライビングに集中!集中! まだ優勝は諦めていない。走り方を探りながら現在のベストを尽くす。なんとしてもこの車を無傷でゴールへ運ばなくては。チームの気持ちを背負って走る。
   しばらくすると1位走行中の5号車が、なんとジリジリと近づいてきた。何かのトラブルなのか、GAS残量からペース調整に入った様子。残り時間はあとわずか。ここで一気に抜き去り再び1位へ返り咲く。こちらのGASはなんとかゴールまで持ちそう。無線でチームへ伝える。ただいま1位快走中!

  しかし喜ぶのもつかの間、無線から悲痛な連絡が、、、75号車アルテッツァが21秒台の猛スピードで追い上げていると。 なに?それではあっという間に追いつかれるではないか。

    ファイナルラップのドラマ
 
   いよいよ68周目ファイナルラップとなった。無線からは後ろから追い上げる 75号車のラップタイムとその距離が伝えられる。ファイナルラップで追いつかれるぞ!と。
  すでにバックミラーで確認できている。75号車はグングン追いついてくる。ああ、、これで一環の終わりか。4コーナまでにピタリと後ろに着かれる。5コーナー、こちらはインをベタベタにキープ。アウトから仕掛けられた。しかし絶対に引くわけにはいかない。ブレーキ勝負だ。75号車がブレーキ踏むまで絶対に自分は踏まない。車重で絶対に有利なはずだ。ブレーキングには自信がある。負けたくない。

    2台が並んでコーナーに突っ込む、一瞬75号車が前へ出るが、こちらもブレーキを遅らせて更に前へ出る。2台ともややオーバースピード、コーナーで姿勢が乱れる。2台ともドリフト状態でコーナーを抜けるが、ロードスターはアウトに流されてしまった。その一瞬の立ち上がりロスで75号車は前へ。
  負けた。完敗である。これだけのタイム差ではどうすることも出来なかった。チームのみんな。ごめん。2位後退。
  すぐさま気持ちを切り替え75号車を追撃。とゆうのも前方に遅い車の集団が見えたからだ。引っかかればもう一度抜くチャンスが来るかもしれない。




 
    V字コーナでやや距離が近くなる。そしてヘアピンアプローチ時には一気に距離が縮まる。ひょっとして追いつくのか?ここしかない!とインに飛び込む。またしてもオーバースピード、アウトに4輪流される。。。でも、なんとコーナー脱出時には75号車をパスしていた。
   1位に返り咲いた。このままダウンヒルを降りれば優勝なのか?バックミラーには75号車は追いついてこない。いける。いけるぞ!




 
    ここで冷静に戻る。この先に誰も敵はいない。もし最後の90度コーナーやシケインでしくじったら全てパーだ。ここはしっかり走ろう。ペースを極端に落としてもトラブルが起こる。無線のスイッチも押すのをやめよう。無用なトラブルは避けて冷静に走る。ブレーキ、アクセル、ギアチェンジ。
   やっとストレートに出た!無線のスイッチON!抜きました!

ポジション1です!
    ライトオン!
      チェッカー!!!
       やった優勝だ!! 
 
  ウイニングラン。。

   みんなが暖かく迎えてくれた。

    コースのオフィシャルも旗を振って勝利を称えてくれている。

     やったよ。チーム全員で勝ち取った優勝だ!


 
 
 
 
 

       Idlers Games 春の3時間耐久レース もてぎ 2010.4.4
        クラス : GT−Street1
        周回数 : 68周
        ベストタイム : 2’25’’827(40周目)
        チーム名 : ガレージソニック・ズミーRF・EDT
        参加車両 : ユーノスロードスター NA8C
        成績 : 総合、クラス  優勝

 

最後に

   参戦4戦目にしてこのように優勝出来たのも、個々が役割分担をしっかりこなし、その力を結集したチームワーク力の勝利だと思う。耐久レースには耐久レースの奥深さがある。
   ドライバーに求められるのもは、レースで速く走るだけではだめであり、常に車の状況を把握でき、冷静に考え判断、実行できる力、そして様々な情報を伝える力などでである。さらにレース車の製作、メンテナンスも高いレベルで要求され、きっちり整えられた状態であることも、勝つ為には重要であると改めて感じさせられた。
   今回、優勝できた感激ももちろんあるが、このような安全で楽しいレース環境を整えてくださるIlders主催者様へ、同じイベント主催者として、感謝しそして見習っていきたい。、さらに、多くの我がチームを支えてくださる関係者の皆様、そしていつもいつもレース場に足を運び、応援してくださる皆様に深く感謝したい。

      ご支援、ありがとうございました。